R&B史を描いた映画「ドリームガールズ」

1960~1970年代のモータウン・サウンド

2007年の米アカデミー賞の6部門にノミネートされていた話題作「ドリームガールズ」(ビル・コンドン監督)。1981年初演の「ドリームガールズ」ミュージカルの映画化。全編に流れる1960~1970年代の懐かしい“モータウン・サウンド”と、ビヨンセら出演者の絢爛(けんらん)豪華なパフォーマンスは国境や言葉を越えた感動を与えてくれます。

シュープリームスがモデル
経営者ベリー・ゴーディ・ジュニア

物語は架空の黒人女性トリオ「ドリームズ」の成功と挫折、再生を描いているが、登場人物や設定はすべて実在の歌手やレコード会社を元にしています。

スティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイらを育てる

「ドリームズ」は、ダイアナ・ロスが所属し、「恋はあせらず」(1966年)などの大ヒットを飛ばした「シュープリームス」。彼女たちが所属するレインボー・レコード社はスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイらを育てたモータウン・レコード。その社長カーティス(ジェイミー・フォックス)は、モータウンを全米最強の“ヒット曲製造工場”に仕立て上げたベリー・ゴーディ・ジュニアです。

舞台はデトロイト

ちなみに、1959年に自動車の街デトロイト市で創業したモータウンは、デトロイト市の愛称モーター・タウンから社名をつけました。これらを踏まえて作品をみると、より楽しめるかも。

ビヨンセ、エディ・マーフィ出演

1962年のデトロイト。中古車販売会社経営のカーティスは、公開新人オーディションで観客を沸かせた女性3人組の将来性に着目し、独占契約を結びます。3人は男性歌手ジェームス(エディ・マーフィ)のバックコーラスを務めますが、エフィー(ジェニファー・ハドソン)の歌唱力とディーナ(ビヨンセ)の美しさでたちまち話題に。カーティスが設立したレインボー・レコードの看板スターとなるのですが…。

ソウルやR&B
ジェニファー・ハドソンの歌唱力

米を代表するスター、ビヨンセの存在感もすごいのですが、米国のスター発掘番組「アメリカン・アイドル」の準優勝者ハドソンの雷神のごときゴスペル唱法に圧倒されます。マーフィの歌のうまさも特筆ものです。ソウルやR&Bの影響を受けたノリノリのダンス曲から切ないバラードまでモータウン・サウンドの魅力が存分に堪能できます。

痛烈な批判精神

しかし、この作品を傑作たらしめているのは現在の米エンターテインメント業界に対する痛烈な批判精神といっていいでしょう。メーンボーカルをディーナに譲るのを拒むエフィーを説得する場面で歌われる感動的なバラード「ファミリー」。♪我々は団結し、大空に枝を伸ばす巨木の如き家族・・・

1980年代以降のレコード業界を批判

かつてレコード会社や映画会社では、社員は家族のようなものでした。ところが1980年代以降、企業規模の巨大化や多国籍化に伴って社員は歯車と化し、社員より株主を大切にする利益至上主義の米型市場経済のなか、経営者は株価下落などを恐れて斬新な挑戦を避け続けました。その結果、米国では音楽も映画も没個性のつまらないものばかりになりました。この作品はエンタメ業界に原点回帰を促しています。